名古屋城石垣の刻印を見に行こう! Vol.16 本丸西壁 其の三
2025.11.17
2025.12.14
一、なんらかのマークが付けられた石を「刻印」や「刻紋」、
もしくは人物の名が入っているものを「刻銘」と呼びますが、
この連載では主に「刻印」という呼び方で統一します。
一、名古屋城には膨大な数の刻印があり、
確認されているだけで2000以上もあるのだとか。
劣化により判別不明なものも多いため、本連載では
目視ではっきりわかるものを中心にご紹介してゆきます。
(名古屋城の刻印についての詳しい概要はこちらの記事もご覧ください)
一、タブレットにて刻印を白や赤の線でなぞった加工画像もありますが、
フリーハンドゆえのゆがみや想像で線を補ったものもあるため、
あくまでイメージとしてお楽しみください。
同シリーズ記事はこちら▼
「名古屋城石垣刻印シリーズ」一覧はこちらから
本丸西壁も残すところあと二回、今回はこの範囲を見てゆきましょう。

刻印がある石を赤く塗ったのがこちら。

名古屋城内でも指折りの刻印激戦区、その数なんと500以上!
塗るだけでかなりの時間を要しました…
全てはご紹介できないので、こんな感じで注目箇所を絞ります。

まずは左上にあるこのあたりから。

天端の下にある①には、〇が2つ重なった「違い輪」や、
〇が重ならず3つ並んだ刻印が盛りだくさん。
他にも「丸に七の字」や「角に七の字」、△マークの「一つ鱗」、
「違い輪」内に七と大の字が入ったものなどがあります。


②は刻印の境目で、左が「角に七の字」ゾーン、
右が違いはあれど〇を主として用いているゾーン。
左上には「角に七の字」に「一の字」が足されているものも。


続いて、②の右隣にある③へ。
「一つ鱗」、「丸に七の字」「違い輪」内に七と大の字が入ったもののほか、
こんな小さな石にまで刻むか…と思わせる〇の組み合わせがあります。


続いて左側の中段から下段まで。

④は「角に七の字」と丸の組み合わせ刻印の境目。
注目は右側の上から二つ目にある「違い輪」と「大の字」の組み合わせ。


ここまで見てきた中に「違い輪」内に七と大の字が入ったものがありましたが、
この刻印は〇の外に「大の字」が刻まれております。
輪の中に刻めなかったのか、わざと外に刻んだのか…真相やいかに。

お次は④の下にある⑤。
〇が三つ並んだ刻印、〇が重なった「違い輪」、「丸に七の字」、
△の「一つ鱗」などがあり、右上には「分銅」っぽい刻印も。
さらに、左と真ん中に「違い輪」内に七と大の字が入ったものがありますが、
左側のものは何やらはみ出しているようにも見えます。


さらに下の⑥がこちら。
おなじみの刻印が並ぶ中、真ん中に十の字のような刻印があり、
その左には小さな石に刻まれた〇三つがあります。


ここから写真中央、配管がある付近の上段と中段あたりへ。

上段の⑦は様々な刻印が。
既出の「一つ鱗」や「違い輪」、欠けた刻印を除けば、
・左上と右に、□内に点がある「角に星」と、その右下に「丸に中」
・「丸に中」の下にある「木の字」、中央上に2つある「木槌」
・「違い輪」の下と写真下にある▽は「鱗にさの字」
・下の「鱗にさの字」の左には「丸に上の字」、上には「二串団子」
・右上に、〇に三本線が入った「丸に三つ引き」


さらに、配管の向こうに「三串団子」がありますが、
斜めから見ても全体を見るのは至難の業です

配管の左側、中段あたりの⑧には、
「一つ鱗」と「一つ鱗」+「一文字」と「分銅」のような刻印が。
右下の〇は、内側に何か刻まれているかもしれません。


ここから右側、上から順にみてゆきましょう。

⑩には私の好きな「三串団子」もありますが、
それ以上に目を引くのが上に2つある「団扇」+「波切車」の刻印。
特に左上のものは刻印同士が重なっており興味深いですね。
他にも左上に「丸に出十字」、真ん中上に「木の字」と「≫」のような刻印、
右下には欠けた「丸に上の字」と「結び雁金が」あります。


お次は、⑨の左下にある⑩。
左下に「団扇」がありますが、こちらは「結び雁金」との組み合わせ。
真ん中上に少し変わった「丸に出十字」、
「団扇」が刻まれた石のまわりに「卍」+「一文字」があり、
他にも「鱗にさの字」、「木の字」、「丸に三つ引き」などがあります。


続いて中段よりやや上のこのあたり。

今回最大の見どころといえるのがこの⑪。
上には「丸に出十字」、「丸に結び雁金」のようなもの、「一つ鱗」、
下には「丸に三の字」+□+「木槌」のようなものなどがありますが、
注目すべきは中央にある3つの石たち。


左と真ん中の石にあるのが、個性的な「ひも付き瓢箪」。
職人の遊び心がうかがえる、名古屋城内随一の刻印といえるでしょう。


「ひも付き瓢箪」の右には、「団扇」2つ+「結び雁金」2つ+「三の字」刻印。
左側の大きな「団扇」もなかなかの力作ですね。

⑪の右にある⑫は、5つの「丸に三つ引き」があり、
・左上に「波切車」+「結び雁金」
・真ん中上に△と―の「一つ鱗」+「一文字」が2つある石
・真ん中上やや左に「木の字」
・下には左から「井筒に星」、「雁金」、「団扇」+「結び雁金」、「木槌」
といったラインナップになっております。


目線を右側中段からやや下へ

⑬は「≫」と〇に串が貫通しているような刻印のゾーン。
右上に「波切車」、真ん中右側には不完全な「三串団子」も。


⑭も主に〇に串が貫通しているような刻印があり、
「井筒に星」や「三串団子」などもあります。


ちなみに、この串が少し曲がっている「三串団子」、
陽が当たっていても時間によっては見えづらい時もあり。

最後は下段のこのあたり。

⑮にあるのは、ほぼ〇に串が貫通しているような刻印のみ。


注目すべきは真ん中にある割れた石。
石を割った跡である「矢穴痕」内にも刻印がある、なかなかレアなもの。

一番下にある⑯は「≫」のような刻印が何個かあり、
中央の石には3つ、まるで顔のように刻まれております。


去る11月25日、名古屋城の石垣修復工事説明会に参加してきました。
現在石垣積み直し中の本丸搦手馬出に入れる貴重なイベントを楽しみ、
ついでに、積み直しが終われば見えなくなるだろう刻印もチェック。
このようなイベントがあれば、来年以降も積極的に応募してゆきたいと思います。

積み上げる石の側面にあった刻印
名古屋城
場所:愛知県名古屋市中区本丸1−1
電車でのアクセス:地下鉄名城線「名古屋城駅」下車後徒歩約5分
車等でのアクセス:名古屋高速都心環状線「丸の内IC」から北方向へ約5分
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新井 良典
愛知県出身、三重県在住の社会保険労務士。一番好きな武将は大谷吉継公。現代にも活かせる人財づくりを戦国武将から学ぶ「いい武将研究会」を主催し、城や戦国武将に関する執筆や講演活動も行っている。
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