この記事は2017年6月20日記事のため内容が古い可能性があります。

楽しくわかる江戸づくり　江戸建設物語「家康、江戸を建てる」を読む

2017.06.20

江戸建設物語「家康　江戸を建てる」

残念ながら受賞はできませんでしたが、直木賞候補にあがっていた「家康　江戸を建てる」（門井慶喜著/祥伝社）を読んでみました。

発売時には書店に平置きされていたので、目に留まった方やもう読まれた方もいらっしゃるかもしれません。朝日新聞、日本経済新聞などにも絶賛の書評が出ていたということです。

この書名、斬新ですよね。書名って大切なんだなということがよくわかります。私も書名をみて手に取りましたから。そして表裏の表紙には、江戸古地図の写真が使われています。

私は主に江戸を中心とした史跡を調べているので、この江戸古地図は最近よく見ていて、とても親近感があるものなのです。表の表紙には「御城」と書かれ、徳川家の御紋がついている場所、そうです、今の皇居周辺が記されているものが出ているので、とても「いいね！」と思ってしまいました。

寛永寺、増上寺も写っています。

寛永寺

増上寺

どんな話？

さて、その内容を一言でいうと、

江戸を大都市に発展させていったその様子が書かれているという感じ

徳川家康が、北条家小田原城を攻め落としたことの功績という形で、豊臣秀吉から関東の八か国、相模、武蔵、上野、下野、上総、下総、安房、常陸の二百四十万石を与えられてから、江戸を大都市に発展させていったその様子が書かれているという感じでしょうか。

文章はとてもわかりやすく、文字数も多くないので、本は厚みがありますが、ハリーポッターなどと比べるとあっという間に読めてしまうものです。

江戸のことを詳しく調べていくと、現在の東京を見る目が少し変わっていきます。この本を読むと東京のことをもっと知りたくなるかもしれません。

東京の都心はビルが多く立ち並び、道路が整備され、史跡などは一見どこにもないように見えますが、実はあちらこちらに江戸時代を知ることができるものがあるのです。今はもうその形を残さないものでも、「○○の跡」と書かれた塔や説明版のようなものもたくさん点在しています。もちろん、徳川家康ゆかりの寺や神社、そしてこの坂、あの川がどれもこれも徳川家康とその家臣たちの功績のおかげなのだと知ると「徳川家康さん、家臣の皆さんどうもありがとう。」という気持ちになりますよ。

特に、江戸は海を抱え、川が多い湿地帯。当時の技術で川の流れを変えたことの素晴らしさは、今のビル建築にも劣ることのないすごい技術だと思いました。

ここから全てが始まったのだと知ると本当に感慨深いものです。

こんな言葉にも

ところで、私は使ったことのない言葉ですが、お酒の席の場所を変えるとき、最初の店から次の店に変えるときに「河岸を変える。」と言うことがあるようです。この「河岸」は、江戸時代では新吉原を囲む堀沿いの通りとそこにある遊女屋のことを「河岸」と言っていたそうです。「河岸を変える」とは、もともとは遊女が抱え主や働き場所を変えるときに使っていた言葉が、今では一般的に遊び場所を変えるとき（飲む場所を変えるとき）に使うようになったそうです。広義で考えれば言葉さえ、徳川家康にゆかりがあるものもあるのですね。