名古屋城石垣の刻印を見に行こう! Vol.17 本丸西壁 其の四
2025.12.14
2025.12.28
一、なんらかのマークが付けられた石を「刻印」や「刻紋」、
もしくは人物の名が入っているものを「刻銘」と呼びますが、
この連載では主に「刻印」という呼び方で統一します。
一、名古屋城には膨大な数の刻印があり、
確認されているだけで2000以上もあるのだとか。
劣化により判別不明なものも多いため、本連載では
目視ではっきりわかるものを中心にご紹介してゆきます。
(名古屋城の刻印についての詳しい概要はこちらの記事もご覧ください)
一、タブレットにて刻印を白や赤の線でなぞった加工画像もありますが、
フリーハンドゆえのゆがみや想像で線を補ったものもあるため、
あくまでイメージとしてお楽しみください。
同シリーズ記事はこちら▼
「名古屋城石垣刻印シリーズ」一覧はこちらから
本丸西壁最終回は、西南隅櫓下のこのあたり。

刻印がある石を赤く塗るとこんな感じ。
前回より数は減りましたが、ここにも300を超える刻印があります。

今回ご紹介する刻印の分布がこちら。

まずは左上から見てゆきましょう。

①の範囲にある刻印石は9つ。
右上に欠けた「丸に出十字」、左隣に「≫」っぽい山二つと「下の字」、
その下には欠けた「木槌」と「木の字」が並んでおります。
真ん中上に「丸に三つ引き」+「木槌」+「丸に三の字」、下には「三串団子」、
左隣に重なった「二串団子」〇に串が貫通しているような刻印があり、
左上には「丸に三つ引き」内に何か足された刻印も。


②もバラエティー豊かな刻印ゾーン。
左に「丸に出十字」「丸に三つ引き」「丸に中の字」「卍と一文字」と並び、
中央に「木の字」と「木槌」、右下に「丸に一文字」が。
さらには「三串団子」の完全体と欠けたものがある他、
△と▽に刻まれた「鱗にさの字」があります。


続いて、少し下の中段からやや上あたり。

③は、3つの「団扇」と1つの「丸に出十字」、
上に少し形の異なる2つの「波切車」があります。


隣の④には、左から上に「三串団子」「木の字」「結び雁金」、
右上に「丸に三つ引き」+「三の字」、その下に「木槌」が。
全体的に欠けた部分が多く、真ん中下の刻印は何か全くわかりません。


中段下側に目線を下げ、白い配管の左右あたりへ。

⑤には「木槌」や「団扇」、「丸に出十字」などがありますが、
ここの注目は左下にある「三串団子」。


ひっくり返すとこんな感じで、
「三串団子」の横には「松井」という人名らしき文字が刻まれております。

⑤のやや右下にある⑥へ。
左に〇に串が貫通しているような刻印や欠けた「田の字」らしきものなど、
右に「丸に中の字」欠けた「木の字」「≫」などがあり、
中央に上から「木槌」「丸に出十字」「三串団子」があります。


⑦には「三串団子」+「松井」の刻印がある他、
「丸に中の字」「≪」と欠けた〇らしき刻印も。


ここから写真中央付近。

⑧は「木槌」が4つ、真ん中左には「木槌」がダブルで刻まれたものがあり、
「丸に三つ引き」も単体のものと「丸に三の字」「十の字」が足されたものがあり。
上下を「丸に中の字」「結び雁金」に挟まれた石は、
矢穴痕内に何かしらの刻印がある石かもしれません。


⑧の隣にある⑨へ。
左側には欠けた「違い輪」と「丸に三つ引き」らしき刻印、
真ん中下に「丸に上の字」、右上に「木の字」刻印が。
真ん中上にある石は、「三串団子」と「丸に出十字」「木槌」が
一堂に会する珍しい刻印となっております。


続いて、写真中央の中段から下段あたりへ。

⑩には「木槌」2つと「木の字」、右に「団扇」「結び雁金」と並び、
下には欠けた「丸に三つ引き」らしきものと「瓢箪」があります。


⑩の下にある⑪がこちら。
右下には曲線を描く素晴らしい「三串団子」があり、
左にも欠けておりますが串の部分がカーブした「三串団子」が。
他には〇に串が貫通しているような刻印や「結び雁金」、
右下に「丸に三つ引き」+「三の字」、左上には〇に文字らしき刻印があります。


ここから隅石に近い右側を見てゆきましょう。

⑫には、左に「鱗にさの字」「小の字」、右上に「丸に一文字」。
右下に「二串団子」と「木槌」らしき刻印があり、
真ん中右には矢穴痕内に「丸に出十字」が刻まれた珍しい石があります。


お次は隅石付近の⑬へ。
隅石と左下に「波切車」、右下に「丸に出十字」と〇らしきもの、
左に「丸に三つ引き」+「木槌」、下に「丸に上の字」などがあります。


⑫と⑬の下にある⑭には「丸に三つ引き」と「丸に出十字」が2つずつ、
左上に「鱗にさの字」、右下に「波切車」、真ん中に「波切車」+「団扇」。
右上に「升に一つ星」、その下にあるのが「卍と一文字」です。


ここから右側中段。

⑮は「丸に中の字」「木の字」「丸に出十字」などの刻印があり、
その中でも真ん中上にある「木槌」×2が良い味を出していますね。


隅石横の⑯、ここには上下に大小の「団扇」と「木槌」があり、
下にある短い「木槌」の右隣には「木の字」があります。
左下にあるのはおそらく「丸に結び雁金」、
真ん中には「結び雁金」と〇っぽいものが繋がった刻印らしきものも。


西壁のラストは下段のこの2か所。

⑰の左下には西壁3つ目の「三串団子」+「松井」、
右側に「木槌」や「卍と一文字」、真ん中に欠けた「丸に三つ引き」があり、
右上には〇に何かしら刻まれていそうな石もあります。
さらに左上には、「団扇」+「傘」+「波切車」という芸術的な刻印も。


⑱にも右に「団扇」+「傘」の刻印がありますが、
こちらは「波切車」ではなく「雁金」が組み合わせてあります。
その下にある「三串団子」はもちろん、左の大きめな「木の字」と「木槌」、
右端の「角に上の字」などなかなか見ごたえのある箇所と言えるでしょう。


生い茂っていた草も枯れ始め、いよいよ刻印シーズンが到来しました。
だいたい3月末くらいには草が成長し始めるため、
名古屋城の刻印を楽しむにはこれからの時季がおススメです。

12月末のすっきりした埋門跡付近石垣
名古屋城
場所:愛知県名古屋市中区本丸1−1
電車でのアクセス:地下鉄名城線「名古屋城駅」下車後徒歩約5分
車等でのアクセス:名古屋高速都心環状線「丸の内IC」から北方向へ約5分
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新井 良典
愛知県出身、三重県在住の社会保険労務士。一番好きな武将は大谷吉継公。現代にも活かせる人財づくりを戦国武将から学ぶ「いい武将研究会」を主催し、城や戦国武将に関する執筆や講演活動も行っている。
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