100名城を巡る「彦根城」前編
2024.12.25
2025.01.12
この連載は、公益財団法人日本城郭協会が定めた「日本100名城」の中で、
筆者が訪れたことがあるお城を紹介してゆくものである。
なお、城郭名は「日本100名城」の表記に合わせ記してゆく。
今回の史跡は、前回に引き続き滋賀県彦根市の「彦根城」。
前編にてざっくりと彦根城の歴史にふれました。
今回は、1604年(慶長9年)の築城時あたりの
様子や逸話をご紹介してゆきたいと思います。
徳川家康と石田三成が関ヶ原で対峙したのが1600年(慶長5年)。
これに勝利した徳川家康は、石田三成の旧領を井伊直政に与えます。
石田三成の居城といえば、
「三成に過ぎたるもの二つ 島の左近に佐和山の城」
ともうたわれ、その立派さを称えられていた佐和山城。
井伊直政も当初は佐和山城へ入城しましたが、
石田三成の治めた地というイメージを払拭するためか、
佐和山城を廃し新たな城の建造する計画をたてます。
1602年(慶長7年)に井伊直政は亡くなりますが、
跡を継いだ井伊直継が1604年(慶長9年)から彦根城の築城を開始。
関ヶ原の戦いの後、豊臣家との関係を維持していた徳川家康でしたが、
大坂城を包囲するように次々と築城や大改修を施します。
彦根城築城は伊賀・伊勢・尾張・美濃・飛騨・若狭・越前の
七国十二大名に築城を命じる「天下普請(公儀普請)」で行われ、
近江国にあった諸城から様々な建築物を運び込み再利用したのだとか。
天守 … 大津城の天守を縮小し移築
天秤櫓 … 長浜城から移築
その他、西の丸三重櫓や太鼓櫓門もどこかの城から移築したといわれており、
石垣の石は佐和山城や安土城など、瓦の土は小谷山から持ってきたとも。
移築などの詳細は不明ですが、
「石田三成の色を消し、豊臣家に対する警戒を強める」
という目的を早く達成したいがため、
各地から資材をかき集め築城を急いだといえるでしょう。
その後彦根城は1606年(慶長11年)に天守などの主郭部が完成、
1615年(慶長20年)の大坂の夏の陣を経て御殿が建造、
1622年(元和8年)に完成したといわれております。
・天守は令和8年1月現在工事中、
2階が見られるようになるのは4月以降だそうです
・こちらが「天守」の入口、強固な門扉が開いた状態でお出迎え
・現在防災設備整備工事中の二階、
残念ながら横から階段の全体は撮影できず
・「天守」最上階の内部と北側の眺め
・帰路に二階と三階に架かる階段を撮影
現存天守といえば、頭とすねに気を付けるこの急な階段ですね
・帰りに多聞櫓付近から「天守」を見上げれば、
切妻破風、入母屋破風、唐破風が一挙に見られます
・矢穴が多く残る天守台の石垣も忘れずにチェックしましょう
・本丸の東にある「着見櫓跡」から北東にある佐和山、
北側の石垣とその下に広がる井戸曲輪を見渡す
・本丸から「西の丸」へ移動
三重櫓までは行けますが、その先は現在立ち入り禁止
・西の丸から井戸曲輪の方へ、こちらから見上げる天守も良し
・このあたりの石垣には転用石も(写真中央少し右下)
・石垣を堪能した後、北側の登城口を下り黒門方面へ
・黒門の東側に延びる土塁、紅葉の時期はこんな感じ
・黒門から道なりに西方面へ進むと、登り石垣がお目見え
・西の丸と出曲輪を隔てる大堀切の東側下にあります
・緩やかにカーブする内堀と石垣を堪能した後、
北端にあたる「山崎曲輪」まで移動
・「山崎曲輪」の石垣を上から見ながら道なりに進むと、
かつて城門として使われていた「長橋口跡」が見えてきます
・「長橋口跡」から南へ進むと、またもや登り石垣が
西の丸と出曲輪を隔てる大堀切の西側下にあたります
・かつては17頭もの建物があったという「米蔵跡」
現在は梅林となっております
・大手入口から天秤櫓の下を通り表門方面へ
こちらにある登り石垣もお見事!
・最後は、天守を見上げるために「玄宮園」へ
夕方で逆光になりましたが、これはこれで良い雰囲気
・「玄宮園」の南東側から石垣と中堀を眺めて彦根城巡り終了
おまけ
彦根城は多くの大名を動員し天下普請で築かれた城ですが、
名古屋城や大阪城にあるような刻印入りの石は無いとのこと。
私も登り石垣と並行し双眼鏡を片手に2時間ほど探索、
しかし、見つけることはできませんでした。
ちなみに、玄宮園の塀に「六」と読めるものがありますが、
玄宮園が出来たのは1677年(延宝5年)頃。
築城当時のものではないですが、これもなかなか興味深いですね。
今回は時間切れで見学できませんでしたが、
珍しい現存の「馬屋」、「西の丸三重櫓」や「佐和口多聞櫓」
あたりもじっくり見て周りたいところです。
西の丸と出曲輪を隔てる「大堀切」
彦根城
場所:滋賀県彦根市金亀町1−1
電車でのアクセス:JR「彦根駅」下車後、西方向へ徒歩約15分
車等でのアクセス:名神高速道路「彦根IC」から北西方向へ約10分
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新井 良典
愛知県出身、三重県在住の社会保険労務士。一番好きな武将は大谷吉継公。現代にも活かせる人財づくりを戦国武将から学ぶ「いい武将研究会」を主催し、城や戦国武将に関する執筆や講演活動も行っている。
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