名古屋城石垣の刻印を見に行こう! Vol.06 大天守 其の六(北壁編)
2025.04.30
2025.05.30
一、なんらかのマークが付けられた石を「刻印」や「刻紋」、
もしくは人物の名が入っているものを「刻銘」と呼びますが、
この連載では主に「刻印」という呼び方で統一します。
一、名古屋城には膨大な数の刻印があり、
確認されているだけで2000以上もあるのだとか。
劣化により判別不明なものも多いため、本連載では
目視ではっきりわかるものを中心にご紹介してゆきます。
(名古屋城の刻印についての詳しい概要はこちらの記事もご覧ください)
一、タブレットにて刻印を白や赤の線でなぞった加工画像もありますが、
フリーハンドゆえのゆがみや想像で線を補ったものもあるため、
あくまでイメージとしてお楽しみください。
同シリーズ記事はこちら▼
「名古屋城石垣刻印シリーズ」一覧はこちらから
今回は大天守台の北壁の最終回。北壁の右側にあたるあたりをご紹介。
3回にわたって見てきた天守北壁ですが、1752(宝暦2)年から行われた
「宝暦の大修理」で積みなおす際に結構な数の石が交換されたそうな。
特に北西隅石は7割以上の石が交換されたようで、
かつてはあった加藤清正家臣の名前入り刻印石も残念ながら失われております。
ちなみに、今回使用している写真は3月のものと4月末のものですが、
4月末には下の写真のように一部草が生い茂っております。
北壁右側の範囲にある刻印石はこんな感じ。
少し厳選し、左上にあたる①からチェックしてゆきましょう。
真ん中やや右と下には「木槌」、「木槌」+「南条」、
その下には「生駒車」というおなじみの刻印たち。
しかし、左側の銅製雨樋付近には珍しい刻印が2つあり、
上には漢字の「干」にも「一」と「十」を縦に並べたものにも見える刻印、
下には逆さの「折り鶴」のようにも見える刻印があります。
続いて右側の②、目線を石垣の最上段である「天端石」あたりへ。
こちらには「矢筈」が3つ、逆さの「木槌」+「南条」と新美の「鳥居」が。
②の右隣、隅石に近い③の範囲。
左上には「雁金」、右の上下に南条の「木槌」が一つずつあり、
左下には〇が二つの「違い輪」っぽく見える石があります。
この「違い輪」が刻まれた石の右下には、かなり小さい「丸に六星」も。
そして、③の下にあるのが今回のメインといえる④。
肉眼ではかなりわかりにくいですが、よく見ると何やら文字らしきものが。
刻まれているのは「加藤肥後守 内 新美八左衛門」という名で、
名古屋城刻印についてのバイブル、髙田祐吉先生の『名古屋城天守台石垣の刻紋』を
参考に文字をなぞってみると、こんな感じのようです。
少し角度を変え、雨に濡れた姿を撮影したのがこちら。
上の写真より若干ですがわかりやすいかもしれません。
お次は中段、銅製雨樋横のこの辺り。
⑤には8個くらいの刻印が入った石があります。
真ん中上には「丸に結び雁金」、隣に少し見切れていますが「丸に一つ鱗」。
少し下に小野の「軍配団扇」と、不完全ですが南条の「木槌」があり、
さらに下って左から「丸に丁」、その隣に丸に何かしらの刻印が。
一段下に「一つ鱗」、もしくは「立鼓」と思われる刻印石があり、
隣には丸に謎の文字が刻まれた石、右端に「丸に六星」があります。
続いて⑥を見てみましょう。
ここにあるのが、逆さになった「木」という文字が刻まれた石。
「木」の刻印は、他の大名が担当した箇所にちらほらありますが、
天守台にある「木」はこの石だけだと思います。
さらに続き、⑥の右隣にある⑦へ。
上には一部削られた、右下には完全な「丸に六星」、
真ん中左から逆さの「杉」、「木槌」+「南条」と並んでおります。
中段右側ゾーンの刻印たちがこちら。
⑧にあるのは、上から順に「杉」、「久」の字、「丸に六星」の刻印石。
隅石隣の⑨には、上から少し欠けた「生駒車」、
一段飛ばして「木槌」、逆さの「生駒車」と続き、
さらに下には「抜簾」+「なりた」の名が刻まれた石が並んでおります。
「抜簾」の左横には〇のようなそうでないような印も。
⑨の左下、⑩のあたりには不完全な「抜簾」がある他、
その下には四角の中に何らかの印が刻まれた石、
右側には下川のものと思われる「弦巻」+「井桁」刻印があります。
ここからは前のめりになり、下をのぞき込む形で見てゆきましょう。
⑪には、左下に二重丸の中に十を刻んだ「中輪にくつわ」にも見える刻印石、
上に不完全な新美の「鳥居」、その隣には逆さの「生駒車」が。
⑫には「矢筈」、右上には良いところが欠けた刻印石。
角が2つ残っていることから、恐らく「違い角」ではないかと思います。
最後は⑬、ここにあるのは大きな「丸に六星」の刻印石だけですが、
まわりには様々な幅・深さの矢穴痕があり、あわせて楽しむのがおススメです。
ゴールデンウィークに「茶席」の特別公開を見に行ってきましたが、
茶室の横にあった石畳にも多くの刻印がありました。
珍しい「瓢箪」の刻印や様々なサイズの矢穴が楽しめたため、
次回特別公開される際にはまた行きたいと思います。
茶室横の石畳と、おしゃれな「瓢箪」の刻印
同シリーズ記事はこちら
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名古屋城
場所:愛知県名古屋市中区本丸1−1
電車でのアクセス:地下鉄名城線「名古屋城駅」下車後徒歩約5分
車等でのアクセス:名古屋高速都心環状線「丸の内IC」から北方向へ約5分
新井 良典
愛知県出身、三重県在住の社会保険労務士。一番好きな武将は大谷吉継公。現代にも活かせる人財づくりを戦国武将から学ぶ「いい武将研究会」を主催し、城や戦国武将に関する執筆や講演活動も行っている。
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