武将愛 SAMURAI HEART

名古屋城石垣の刻印を見に行こう! Vol.09 大天守 其の九(西壁編)

2025.06.30

名古屋城石垣の刻印を見に行こう!シリーズについて

一、なんらかのマークが付けられた石を「刻印」や「刻紋」、
 もしくは人物の名が入っているものを「刻銘」と呼びますが、
 この連載では主に「刻印」という呼び方で統一します。

一、名古屋城には膨大な数の刻印があり、
 確認されているだけで2000以上もあるのだとか。
 劣化により判別不明なものも多いため、本連載では
 目視ではっきりわかるものを中心にご紹介してゆきます。

(名古屋城の刻印についての詳しい概要はこちらの記事もご覧ください)

一、タブレットにて刻印を白や赤の線でなぞった加工画像もありますが、
 フリーハンドゆえのゆがみや想像で線を補ったものもあるため、
 あくまでイメージとしてお楽しみください。

同シリーズ記事はこちら▼
「名古屋城石垣刻印シリーズ」一覧はこちらから

 

名古屋城石垣の刻印を見に行こう! Vol.09 大天守 其の九(西壁編)

大天守台の西壁、今回は真ん中からやや右のほうまで。

木が生えているために真正面からの撮影は難しく、
全体図はやや斜めから撮影したものを使用しました。

こちらが刻印の分布、さっそく上から順に見てゆきましょう。

大天守西壁中側の刻印①②③

まずは、最上部に近いこの範囲。

銅製の雨樋右側にある①には、上に新美の「鳥居」、下に「生駒車」が一つずつ。
「鳥居」は上下逆、「生駒車」は横になっておりますが、
どちらも見やすくしっかりと刻んでありますね。

右側の②には3つの刻印が。
左上に少しわかりづらいですが逆さになった「久の字」、
その下には「蕨」、右上にあるのが南条の「木槌」。

続いて①の下方、これも銅製の雨樋右側にある③。
右上に「蕨」、画像下には逆さになった新美の「鳥居」がある他、
「鳥居」の二段上の石には横向きの「丸に六」があります。

大天守西壁中側の刻印④⑤⑥

お次は銅製の雨樋間右側上の方と、少し下の辺り。

④にあるのは、上から「角に四つ星」、「矢筈」、一段飛ばして「輪違」、
その左下に「生駒車」、下に少し欠けのある「団扇」がひしめき合っております。

このエリアの注目は「輪違」と「団扇」の間にある刻印。
一つの石に4つもの刻印がされている石で、
加藤清正が担当した天守台では珍しいものとなります。
珍しい…というよりは、加藤清正や家臣が用いた刻印ではなく、
他の大名家の石が何らかの理由で混ざりこんだのかもしれません。

続いて、④の下にある⑤へ。
左上に小野の「軍配団扇」、二段下に逆さになった「丸に丁」、
中央右端には不完全な「丸に一つ鱗」があります。

⑤の下、⑥には左端に「久の字」、右上に小さめの「輪違」、
その隣に「矢筈」が上下に二つ並んでおり、右下には欠けた四角っぽいものが。
恐らく「違い角」が欠けたか削り取られたかしたものではないかと思います。

大天守西壁中側の刻印⑦⑧⑨

ここから右側、上から中段あたりまで見てゆきましょう。

⑦は曇り時の写真を撮り忘れていたので、晴れたときの画像でご紹介。
左端と右端に、恐らく「三の字」と思われる刻印石がひとつずつ、
中央やや上には新美の「鳥居」が逆さになっております。

⑦のすぐ下、⑧の範囲を見ると、
左上にはどの天候でもわかりやすい南条の「木槌」があり、
右端にはこちらもわかりやすい「結び雁金」が。
もうひとつ、中央やや右上に「丸に九」と思われる刻印がありますが、
欠けているうえに刻印が薄いため、もしかすると別のマークかもしれません。

中段あたりまで目線を下げ⑨へ。
銅製の雨樋に隠れて見づらいですが、上には斜めとなっている新美の「鳥居」、
下には逆さになった「団扇」っぽい刻印があります。

大天守西壁中側の刻印⑩

ここからは、さらに目線を下へ。

今回最大の見どころのひとつがここ、⑩の位置にある刻印です。
地面に近い位置で、刻印があると知らなければ、なかなか見ない箇所かもしれません。

上の石には大きめの「結び雁金」、その下には右下に逆さとなった「木槌」が。
「木槌」といえば南条の刻印ですが、石の右上に文字が刻んであり
左回転させると縦読みで「なんてう=なんじょう」とあります。

わかりやすい雨に濡れたバージョンもついでに。

大天守西壁左側の刻印⑪⑫

最後は、銅製の雨樋右側のこちら。

⑪は、⑩に勝るとも劣らない注目の箇所。
左側には「下川」の名と欠けた「井桁」、「弦巻」の刻まれた石、
右側には「丸に一つ鱗」に加え「平」の字のような珍しい刻印が入った石が。

晴れた日より、雨の日の方がわかりやすいかもしれません。

⑫にあるのは、見るからに不完全な刻印のある石。
「や」の字のようなものの横に、欠けた刻印らしきものがあります。

これに似たものが、過去にご紹介した大天守台北側にあり、
恐らくこの石と同じく「めさしや」のような文字と、
「地紙」と呼ばれる写真のような刻印が施されていたのでしょう。

 


 

先日、名古屋城の内堀にいるシカについてのニュースがありました。
今いる二匹のシカは母娘であり、ともに年齢を重ねてきたとのこと。
人気者である「名古屋城のシカ」をどのように残してゆくのか、
今後は名古屋市が対策に乗り出すようです。


ネコと対峙する名古屋城のシカ

今回の史跡「名古屋城」

名古屋城
場所:愛知県名古屋市中区本丸1−1

電車でのアクセス:地下鉄名城線「名古屋城駅」下車後徒歩約5分
車等でのアクセス:名古屋高速都心環状線「丸の内IC」から北方向へ約5分

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新井 良典

愛知県出身、三重県在住の社会保険労務士。一番好きな武将は大谷吉継公。現代にも活かせる人財づくりを戦国武将から学ぶ「いい武将研究会」を主催し、城や戦国武将に関する執筆や講演活動も行っている。

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