100名城を巡る 甲府城
2024.10.29
2016.03.02
東照宮は徳川家康公を東照大権現として神格化して祀った神社です。
世界遺産でもある日光東照宮、徳川家康公のお墓がある久能山東照宮が有名ですが、当時の大名が各地で建立したため今でも多くの東照宮が残っています。
その意味では浜松市元城町にある東照宮は明治19年に建立された新しいお社ですが、実はその場所に意味があります。
浜松城の前身ともいえる曳馬城(引間城)の跡に建てられたのです。
徳川家康公が曳馬城を落としたのは1568年(永禄11年)のことです。武田信玄公の駿河侵攻に呼応した形で遠江へ攻め入りました。
2年後には岡崎から曳馬に拠点を移し城を拡張します。そして曳馬という言葉が「馬を引く」と敗戦を連想させることから改名を決断。この地にあった浜松荘という荘園から名をもらい受け「浜松城」と名付けたのです。
この東照宮の建立に力を尽くしたのは最後の浜松城代、井上八郎(延陵)さん。旧幕臣で江戸にあった講武所の教授役を務めた人物です。
浜松城代として赴任してからも武士救済のために教育を施したり、三方原を開墾して茶園を作る、浜名湖から水を引き水上輸送路を作るなど、地元の経済発展に貢献しました。
引退してから浜松に徳川家康公を祀る神社がないことを嘆いて、この東照宮の建立を発起したといいます。
曳馬城跡を選ぶあたり、さすが目の付け所がちがう!
いつものようにきちんとお参りしてから撮影を開始しました。
とても落ち着いた佇まいのお社です。当然ですが正面には葵の御紋もあります。
しかし、これだけではなかった!
右手の境内を見ると……。
これは徳川家康公と豊臣秀吉公の銅像!
確かに豊臣秀吉公は織田信長公に使える前に曳馬にいたという話があるのですが、まさか東照宮の中にこのような形で銅像が建っているとは思いませんでした。
(あとで調べてみたら2015年12月16日に除幕されたばかりでした)
しかも真ん中に立って記念撮影できるようになっています。浜松市の「出世の街」アピールおそるべし……。
若き日の徳川家康公の銅像。いままさに戦場で指揮をとっている感じですね。
さらに手水舎にも秘密が!
みたところ普通ですが、軒下に注目してください。
これはもしやあの有名な日光東照宮の「眠り猫」を模したものでは?
色も塗られていませんし形も違うけれど、構図や表情が似てる!
個人的にはこちらの表情の方が愛嬌があるように見えます。
「眠り猫」は後ろにいるスズメを狩りもせずに猫が眠っているほどの平和を象徴したものといわれています。この手水舎を作った人は平和を祈願して日光東照宮にあやかったのでしょうか?
他にも龍や飛竜の装飾がありました。
小さくも想いがこもった手水舎ですので、ぜひ見てくださいね。
日光や久能山には及びませんが、浜松の東照宮も立派な由緒があるお社でした。
しかもちょっと予想外の見どころもある観光スポットです。
徳川家康公もまさか幕府が幕を下ろした後に、曳馬城跡に新たに祀られるとは思っていなかったでしょうね。
小さな東照宮は全国各地に残っています。徳川ファンは地元の東照宮を訪ねてみるのをオススメします。
徳川家に関連した、その土地ならではの言い伝えがあるかもしれません。
所在地:静岡県浜松市中区元城町111-2(34.713336, 137.728514)
見学:無料
アクセス:
<電車>JR「浜松駅」から遠州鉄道「新浜松駅」へ乗り換え、約10分「遠州病院駅」下車。徒歩15分。
<バス>JR「浜松駅」から北口バスターミナルで遠鉄バス市役所経由に乗り換え。「浜松城公園入口バス停」下車5分。
<徒歩>JR「浜松駅」から徒歩20分。
Atsushi.H
フリーWebライター。おもに地元静岡県の歴史、偉人、観光情報をいろいろなサイトで発信中です。好きな戦国武将はやはり地元と関連がふかい徳川家康公。二代将軍秀忠公も地味にすごいと思うのですがどうでしょう。
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